ビタミン・ミネラル C 限定的エビデンス

マルチビタミン・ミネラル(MVM)

Multivitamin / Mineral

最終更新: 参考文献: 6件

📋 クイックサマリー

ひとことで
食事制限中の「保険」。普段の食事が完璧なら不要。
おすすめ度
推奨用量
1日1〜2錠(製品の用法用量に従う)
タイミング
食後(脂溶性ビタミンの吸収を高めるため)
主な効果
微量栄養素の欠乏予防(特に減量期) 免疫機能の維持
注意点
  • 筋力・筋量が直接増えるわけではない
  • 過剰摂取(特にビタミンA、鉄)は有害な場合がある

📊 エビデンスマトリクス

科学的根拠の強さと効果の大きさをまとめた表です。評価基準について詳しく見る

欠乏症の予防・修正

A 強いエビデンス
効果量
研究数 100件
極端なダイエットや偏食により特定の栄養素が不足している場合、確実にその欠乏状態を改善する。

健康な人の筋肥大・パフォーマンス向上

D 予備的エビデンス
効果量 なし
研究数 20件
すでにバランスの取れた食事をしているトレーニーがMVMを追加しても、筋力や筋肉量の向上には寄与しない。

慢性疾患(心疾患・がん等)の予防

C 限定的エビデンス
効果量 無視できる
研究数 15件
大規模観察研究において、一部でわずかなリスク低減が報告されているが、有益性はないとする意見も多い。

概要

マルチビタミン・ミネラル(MVM)は、様々なビタミンと必須ミネラルが1つの錠剤にまとめられた、世界で最も一般的なサプリメントです。 フィットネス界隈でも「プロテインの次に買うべきサプリ」として推奨されがちですが、その必要性については、**個人の現在の食事状況(充実度)**によってエビデンスレベルがAにもDにも変わるという特殊な立ち位置にあります。

作用メカニズムとエビデンス

筋肉を合成したり、ホルモンを作ったり、エネルギー(ATP)を生み出す過程では、ビタミン(B群など)やミネラル(亜鉛、マグネシウムなど)が「補酵素・補因子」として不可欠です。不足すれば間違いなくパフォーマンスも筋肥大効率も落ちます。

しかし、重要であることと、「サプリメントで追加摂取すべきか」は別の問題です。

1. バランスの取れた食事をしている場合(効果:D)

十分に肉、魚、卵、野菜、果物、適度な炭水化物を食べている場合、体内のビタミン・ミネラルのタンクはほぼ満タンです。ここへMVMを流し込んでも、水溶性ビタミンは尿として排出され、筋肉が劇的に増えたり力が強くなったりすることはありません。

2. 減量(ダイエット)中の場合(効果:A〜B)

ここがMVMの出番です。摂取カロリーを大幅に制限し、食べる食材の種類も固定化されがちな「厳しい減量末期」においては、どうしても微量栄養素が不足しがちになります。この場合、MVMは**「低カロリーで栄養の穴を埋める保険」**として非常に有効に働きます。

用量・タイミング

  • 推奨用量: 1日1タブレット〜複数錠(製品の指示に従う。メガビタミンなどの過剰摂取は推奨しません)
  • タイミング: 食後
    • ビタミンA、D、E、Kなどの脂溶性ビタミンは、食事に含まれる脂質と一緒に摂ることで吸収率が劇的に上がります。空腹時に水で飲んでも吸収が悪いです。

安全性と注意点: 「抗酸化物質」の摂り過ぎリスク

近年、スポーツ科学において重要な注意喚起がなされています。 ビタミンCやビタミンEは強力な「抗酸化物質」であり、MVMにはこれらが高用量(1000mg以上など)で配合されている海外製品が多くあります。

トレーニングを行うと筋肉内に「活性酸素(ROS)」が発生します。一昔前はこれを悪玉とみなし、抗酸化サプリを大量に摂って打ち消すのが良いとされていました。 しかし現在の研究では、**「トレーニングによる適度な活性酸素の発生こそが、筋肉を肥大させ、環境に適応(強く)させるための重要な『シグナル(ストレス反応)』である」**ことが判明しています(Gomez-Cabrera et al., 2008)。

つまり、MVM(あるいは単体)で**極端に大量のビタミンC・Eを日常的に摂取すると、せっかくのトレーニングによる筋肥大や持久力向上の効果を一部打ち消してしまう(適応を阻害する)**可能性があります。 MVMを選ぶ際は、ビタミンC等の配合量が「日本人の食事摂取基準」の100%〜300%程度(上限でも500mg以内)の、常識的な量のもの(いわゆるOne-A-Dayタイプの安価なもの)を選ぶのが無難です。

よくある質問

Q: トレーニングがハードなら、ビタミン・ミネラルの消費も激しいから大量に飲むべきでは? A: アスリートはたしかに消費量が増えますが、その分食べる量(総摂取カロリー)も多い傾向にあります。食事量が増えれば比例して食品からのビタミン摂取量も増えるため、必ずしもメガドーズ(超高用量)のサプリメントが必要なわけではありません。

Q: 尿が蛍光の黄色になりますが大丈夫でしょうか? A: 全体的に黄色くなる原因は「ビタミンB2(リボフラビン)」が含まれているためです。吸収されなかった余分な分が尿として排出されているだけなので、心配いりません。

参考文献

  1. Gomez-Cabrera, M. C., et al. (2008). “Oral administration of vitamin C decreases muscle mitochondrial biogenesis and hampers training-induced adaptations in endurance performance.” The American Journal of Clinical Nutrition. DOI: 10.1093/ajcn/87.1.142
  2. Paulsen, G., et al. (2014). “Vitamin C and E supplementation hampers cellular adaptation to endurance training in humans: a double-blind, randomised, controlled trial.” The Journal of Physiology. DOI: 10.1113/jphysiol.2013.267419
  3. Mason, J. B., & Dickinson, V. A. (2018). “Should Multivitamin-Mineral Supplements Be Recommended for Healthy Individuals?” Nutrients.