フィッシュオイル (EPA/DHA)
Fish Oil (Omega-3)
📋 クイックサマリー
- 酸化しやすい(変質した油は逆効果)ため品質管理に注意
- 高用量では血液がさらさらになるため、手術予定や抗凝固薬使用者は注意
📊 エビデンスマトリクス
科学的根拠の強さと効果の大きさをまとめた表です。評価基準について詳しく見る
| 効果・目的 | エビデンスレベル | 効果量 | 研究数 | 補足 |
|---|---|---|---|---|
| 心血管系の健康と中性脂肪の低下 | A 強いエビデンス | 大 | 200 | 血中トリグリセリド(中性脂肪)を有意に低下させ、心疾患リスクを低減する効果が強く支持されている。 |
| 抗炎症作用・筋肉痛の軽減 | B 中程度のエビデンス | 中 | 60 | 強力な抗炎症作用により、トレーニング誘発性の筋肉の損傷(DOMS)からの回復を早める。 |
| 筋タンパク質合成(MPS)の促進 | C 限定的エビデンス | 小 | 20 | プロテイン等へのアミノ酸反応性(同化プロセス)を高めるという予備的なエビデンスがあるが、十分に確立されていない。 |
心血管系の健康と中性脂肪の低下
A 強いエビデンス抗炎症作用・筋肉痛の軽減
B 中程度のエビデンス筋タンパク質合成(MPS)の促進
C 限定的エビデンス概要
フィッシュオイルに含まれる**EPA(エイコサペンタエン酸)とDHA(ドコサヘキサエン酸)**は、「オメガ3系(n-3系)」と呼ばれる長鎖多価不飽和脂肪酸です。 体内ではほとんど合成できない必須脂肪酸であり、主に青魚(サバ、イワシ、サーモン等)に豊富に含まれています。
魚を毎日食べる習慣がない現代人は、炎症を促進する「オメガ6(サラダ油やスナック菓子等)」を過剰に摂取し、「オメガ3」が欠乏しているという強いアンバランス(慢性炎症)状態にあります。これをサプリメントで整えることは、健康維持とトレーニングからの回復においてエビデンスレベルAの絶対的推奨事項です。
作用メカニズムとエビデンス
フィッシュオイル(EPA/DHA)の最大の特徴は、全身の細胞の膜に入り込み、強力な**「抗炎症作用」**を発揮することです。
1. 筋肉痛(DOMS)の軽減と回復(効果:B)
激しい筋トレは筋肉に微小な損傷(炎症)を引き起こします。これが筋肉痛(DOMS)の原因です。 数十の研究(Ochi et al., 2018 など)において、継続的なオメガ3の摂取は、トレーニング後の炎症性サイトカインを抑制し、筋肉痛の強度を低下させ、関節のパキパキ感や痛みを軽減することが示されています。これは「より早く次のトレーニングにベストな状態で臨める」ことを意味します。
2. 筋肥大への直接的な影響(効果:C〜予備的)
最近の研究領域として、「オメガ3脂肪酸が、筋肉を合成するスイッチ(mTORシグナル)を入りやすくする(感度を高める)」という説があります(Smith et al., 2011)。若い健常者では劇的な違いは出にくいですが、加齢による筋肉量減少(サルコペニア)の予防においては非常に有効であるとの見方が有力です。
3. 心血管系の健康とダイエット(効果:A)
血中の中性脂肪(トリグリセリド)を大幅に下げる効果は医学的にも確証されています(EPA製剤は医薬品としても認可されています)。 直接的に「脂肪を燃やす」劇的なサプリではありませんが、インスリン感受性を改善することで、結果的に太りにくい体質づくり(ダイエット)をサポートします。
用量・タイミング
- 推奨用量:
- サプリメントの「粒の重さ(例:1粒1g)」ではなく、**「裏面に記載されている EPA と DHA の合計量」**を見てください。
- 健康維持・回復目的には、1日 EPA + DHA 合計で 2,000mg 〜 3,000mg (2g〜3g) 程度が推奨されます。
- 例:裏面の表記が「2粒で EPA 360mg / DHA 240mg(合計600mg)」という製品の場合、1日6〜10粒ほど飲む必要があります。(海外製の高濃度製品が人気なのはこのためです)
- タイミング: 食後、できれば脂質を含む食事の後。
- 油なので、空腹時に水で飲むと吸収が悪く、胃もたれや魚臭いゲップの原因になります。食事の油(胆汁の分泌)と一緒に吸収させるのがベストです。
安全性・副作用・選び方
- 酸化リスク(品質の選び方): フィッシュオイルは非常に「酸化」しやすい油です。酸化した(腐った)油を飲むことは、抗炎症どころか体内で炎症を引き起こし逆効果です。
- 日光と高温を避ける(夏場は冷蔵庫保管を推奨するメーカーもあります)。
- IFOS(International Fish Oil Standards)認定など、第三者機関の品質テストをクリアした信頼できるメーカーを選ぶこと。生臭さ(魚臭さ)が強烈なものは酸化している可能性があります。
- 血液サラサラ効果: 血液を凝固しにくくする作用があるため、日常的に高用量(3g〜)を摂取している場合、手術や抜歯の出血が止まりにくくなることや、抗凝血薬(ワーファリン等)との相互作用に注意が必要です。
よくある質問
Q: クリルオイル(オキアミの油)とフィッシュオイル、どちらが良いですか? A: クリルオイルはリン脂質結合型であり「フィッシュオイルより吸収率が高い」と宣伝されますが、含まれるEPA/DHAの「絶対量」がフィッシュオイルに比べて圧倒的に少ないのが難点です。同じ量のEPA/DHAを摂取しようとするとクリルオイルはコストが跳ね上がります。十分な量を安価に摂れるフィッシュオイルが高コスパで推奨されます。
Q: 青魚をよく食べるのですが、それでもサプリは必要ですか? A: 週に3〜4回以上、サバやイワシなどの青魚をしっかり食べているのであれば、サプリメントの必要性は大幅に下がります。食事で補えない日のみサプリメントを活用する、といった方法で全く問題ありません。
参考文献
- Ochi, E., et al. (2018). “Effect of eicosapentaenoic acids-rich fish oil supplementation on motor nerve function after eccentric contractions.” Journal of the International Society of Sports Nutrition. DOI: 10.1186/s12970-018-0226-y
- Smith, G. I., et al. (2011). “Omega-3 polyunsaturated fatty acids augment the muscle protein anabolic response to hyperinsulinaemia-hyperaminoacidaemia in healthy young and middle-aged men and women.” Clinical Science. DOI: 10.1042/CS20100597
- Mozaffarian, D., & Wu, J. H. (2011). “Omega-3 fatty acids and cardiovascular disease: effects on risk factors, molecular pathways, and clinical events.” Journal of the American College of Cardiology.