シトルリン / アルギニン
L-Citrulline / L-Arginine
📋 クイックサマリー
- アルギニン単体は吸収率が悪く胃腸を荒らすため、シトルリンを推奨
📊 エビデンスマトリクス
科学的根拠の強さと効果の大きさをまとめた表です。評価基準について詳しく見る
| 効果・目的 | エビデンスレベル | 効果量 | 研究数 | 補足 |
|---|---|---|---|---|
| 血流増加(パンプ感の向上) | A 強いエビデンス | 大 | 50 | 一酸化窒素(NO)の生成を促し、血管を拡張させることで筋肉への血流量を有意に増加させる。 |
| トレーニングボリュームと回復の向上 | B 中程度のエビデンス | 中 | 30 | 酸素や栄養素の運搬効率が上がり、疲労物質の除去が早まるため、セット後半のレップ数低下を防ぎ、翌日の筋肉痛を軽減する。 |
| 血圧の低下 | A 強いエビデンス | 小〜中 | 40 | 血管拡張作用により、軽度高血圧者の安静時血圧を低下させる健康効果が認められている。 |
血流増加(パンプ感の向上)
A 強いエビデンストレーニングボリュームと回復の向上
B 中程度のエビデンス血圧の低下
A 強いエビデンス概要
L-シトルリンとL-アルギニンは、体内で**一酸化窒素(NO:Nitric Oxide)**という物質の生成に関わるアミノ酸です。 NOは血管の平滑筋をリラックスさせて「血管を拡張(太く)する」働きがあります。これにより、トレーニング中の筋肉に大量の血液が流れ込む、いわゆる「強烈なパンプアップ(パンプ感)」を引き起こします。
多くのプレワークアウトサプリメント(いわゆる「NO系サプリ」)の主成分として配合されています。
アルギニンではなく「シトルリン」を推奨する理由
体内でNOを作る直接の材料は「アルギニン」です。しかし、サプリメントとしてアルギニンを口から摂取すると、大部分が肝臓(アルギナーゼ酵素)や腸で分解されてしまい、実は血中濃度がほとんど上がりません。また、一度に大量に(5g以上など)摂ると、高確率でお腹を下します(深刻な下痢)。
一方、「シトルリン」を摂取すると、肝臓で分解されずに効率よく血中に乗り、腎臓を通って体内でゆっくりと「アルギニン」に変換されます。 数々の研究(Schwedhelm et al., 2008 など)により、**「アルギニン単体を飲むよりも、シトルリンを飲んだ方が、結果的に血中のアルギニン濃度(そしてNO発生量)が高くなる」**ことが証明されています。
エビデンスの詳細
パフォーマンス向上とパンプ
Pérez-Guisado と Jakeman (2010) の有名なRCTでは、ベンチプレスの前に約8gのシトルリンマレート(シトルリンリンゴ酸)を摂取した群は、プラセボ群と比較して全セットの合計レップ数が52.92%も増加し、翌日・翌々日の筋肉痛が40%減少したことが報告されています。
アンモニアの除去(疲労回復)
シトルリンは尿素サイクルに積極的に関与し、激しい運動によって筋肉内に蓄積する疲労物質「アンモニア」の除去を促進します。これが、息が上がるようなセット後半の粘り強さに繋がると考えられています。
用量・タイミング
- 推奨用量:
- L-シトルリン単体: 1回 3g 〜 6g
- シトルリンマレート(リンゴ酸): 1回 6g 〜 8g (シトルリン2:リンゴ酸1 の比率のもの)
- タイミング: トレーニングの 60分 〜 90分前
- 吸収され、体内でアルギニンに変換され、血中濃度がピークに達するまでに時間がかかるため、直前よりも少し早めに飲むのがポイントです。
安全性・副作用
シトルリンの安全性は高く、アルギニンのような強烈な胃腸障害(下痢)のリスクは非常に低いです(1回の摂取で10gを超えると一部の人で不快感が出る程度)。
- 注意点: 降圧剤(血圧を下げる薬)や、ED治療薬(バイアグラなど。これらもNO発生経路に作用する)を服用している人は、血圧が下がりすぎる危険性があるため使用に注意が必要です。
よくある質問
Q: シトルリンマレート(リンゴ酸)とは何ですか?単体より良いのですか? A: シトルリンにエネルギー代謝に関与する「リンゴ酸(マレート)」を結合させたものです。多くの研究(前述のベンチプレスの研究など)で使われているのは実はこの「シトルリンマレート(Citrulline Malate: CM)」の方です。リンゴ酸自体に疲労軽減効果があるため、相乗効果を狙うならCMを選ぶのが無難です。
Q: パンプ感って筋肉が育つのに関係あるの?ただの一時的な張りでは? A: 血管拡張とパンプ(細胞の膨潤:セル・スウェリング)は、単なる見栄えだけでなく、細胞の合成シグナルを刺激し、筋肥大のトリガーの一つになるという理論が支持されています。また、栄養の運搬・疲労物質の除去効率が高まるため、間接的にも筋肥大に有利に働きます。
参考文献
- Schwedhelm, E., et al. (2008). “Pharmacokinetic and pharmacodynamic properties of oral L-citrulline and L-arginine: impact on nitric oxide metabolism.” British Journal of Clinical Pharmacology.
- Pérez-Guisado, J., & Jakeman, P. M. (2010). “Citrulline malate enhances athletic anaerobic performance and relieves muscle soreness.” The Journal of Strength & Conditioning Research. DOI: 10.1519/JSC.0b013e3181cb28e0
- Trexler, E. T., et al. (2019). “Effects of Citrulline Supplementation on Exercise Performance in Humans: A Review of the Current Literature.” Journal of Strength and Conditioning Research.